発達障害と仕事
「向いている職業リスト」を見ても、しっくりこなかった経験はありませんか。同じ職種でも、職場によって働きやすさはまるで違います。決めているのは職種より環境です。
かんたんにいうと
- 仕事えらびは、職種より職場の環境が大事です。
- 自分に合う条件を知っておくと、えらびやすくなります。
- 配慮をおねがいすることは、わがままではありません。
「向いている職業」では答えが出ない理由
インターネットで「ASD 向いている仕事」と検索すると、プログラマー、経理、研究職……といった職種名がずらりと出てきます。
でも、実際に働いてみると分かります。同じ「プログラマー」でも、職場によってまったく違います。
- 仕様が文書で渡される職場と、口頭で「いい感じにして」と言われる職場
- 静かなオフィスと、営業の電話が飛び交うフロア
- 締め切りが1つの職場と、5つの案件が同時に走る職場
職種名は、この違いを何も表していません。職種で選ぶと外れます。
環境条件で考える
代わりに、自分にとって何が「効く」のかを条件のリストで持っておきます。転職や異動を考えるとき、求人票や面接で確認すべきことがはっきりします。
チェックしてみてください
当てはまるものが多いほど、その条件はあなたにとって重要度が高いということです。
| 条件 | 確認する質問の例 |
|---|---|
| 指示が具体的である | 「業務の指示は口頭ですか、文書ですか」 |
| 手順が決まっている | 「マニュアルはありますか。どのくらい更新されていますか」 |
| 同時に扱う案件が少ない | 「1人が同時に何件くらい持ちますか」 |
| 予定が変わりにくい | 「急な差し込みはどのくらいの頻度でありますか」 |
| 音・光が穏やか | 「フロアの様子を見せてもらえますか」 |
| 雑談・付き合いが少なくてよい | 「昼休みはどう過ごす人が多いですか」 |
| 成果物ではっきり評価される | 「評価の基準を教えてください」 |
| 1人で集中する時間が取れる | 「集中したいときに使える場所はありますか」 |
| 締め切りが明確 | 「締め切りは誰が、いつ決めますか」 |
| 人の入れ替わりが少ない | 「チームの平均在籍年数はどのくらいですか」 |
特性別の考え方
ASDと仕事ASDと仕事力を発揮できるかどうかは、指示の出され方と感覚環境でほぼ決まります。能力の問題ではなく、情報の渡され方の問題であることが多くあります。ADHDと仕事ADHDと仕事「気をつける」で解決しないことに、気をつけ続けるのは消耗です。記憶と注意に頼らない仕組みに置き換えると、同じ人が同じ職場で楽になります。合理的配慮の求め方合理的配慮の求め方配慮を求めることは、特別扱いのお願いではありません。法律に位置づけられた手続きです。ただし「言わなければ始まらない」という点だけは、知っておく必要があります。働き方と就労の支援働き方と就労の支援働き方には複数の入口があり、それぞれ利点と難しさがあります。どれが良いかではなく、いまの自分にどれが合うかで選びます。相談は診断がなくてもできます。雇用する側・上司の方へ雇用する側・上司の方へ「どう接すればいいか分からない」という声をよく聞きます。答えは、接し方より情報の渡し方です。多くの調整は費用がほとんどかからず、他の従業員にも効きます。
「苦手」を減らすより「合う」を増やす
発達障害のある人の就労相談でよく起きるのが、苦手なことを何とかしようとして消耗するという流れです。
電話が苦手な人が電話対応の練習を重ねる、段取りが苦手な人が手帳術の本を10冊読む。努力そのものは尊いのですが、そこにかけた時間とエネルギーの割に、成果が小さいことが多くあります。
一方で、環境を変えると劇的に楽になることがあります。電話をチャットに変える、段取りをテンプレートにする。同じ人が、環境を変えただけで評価が変わるというのは実際によくある話です。
だからこの章では、本人が変わることより、環境を選ぶ・環境を変えてもらうことを中心に扱います。
二次的な困りごとに気をつける
働き始めてからの困りごとは、特性そのものより積み重なった疲れから来ることが多くあります。
- 周囲に合わせて無理を続け、家に帰ると動けない
- 失敗を指摘され続けて、自信がなくなる
- 眠れない、休日が回復に消える
これは二次的な困りごとです。「もっと頑張れば」で対処しないでください。 環境の調整か、働き方そのものの見直しが必要なサインです。
相談先は就労支援にまとめました。診断の有無にかかわらず相談できる窓口もあります。
この章の構成
- ASDと仕事 — 指示の受け取り方、対人面、感覚環境
- ADHDと仕事 — 段取り、締め切り、うっかりへの備え
- 合理的配慮の求め方 — 何を、どう伝えるか。法律上の位置づけ
- 働き方と就労の支援 — 障害者雇用、オープン/クローズ、支援機関
- 雇用する側・上司の方へ — 何をすると戦力になるか