発達のとびら 発達障害の情報を、ひとつの入口から

併存とグレーゾーン

発達障害は「ASDかADHDかどちらか」ではありません。重なることのほうが多く、診断名がひとつでも困りごとがひとつとは限りません。診断基準を満たさない場合も、支援が必要ないという意味ではありません。

かんたんにいうと

  • 特性は、いくつも重なることがあります。
  • 診断名が1つでも、困りごとは1つとはかぎりません。
  • 診断がつかなくても、支援を受けられます。

「どれか1つ」ではない

発達障害を説明する図では、ASD・ADHD・SLDが3つの円で描かれることがよくあります。この図の大事な点は円そのものではなく、円が重なっている部分です。

実際には、複数の特性を併せ持つことのほうが多い、というのが現在の理解です。診断名が1つ付いたからといって、困りごとがその1つの説明で足りるとは限りません。

ASDとADHDは、2013年まで同時に診断できなかった

これは制度の歴史として、はっきり確認できる事実です。

DSM-IV(1994年/2000年新訂)では、広汎性発達障害(いまのASD)がある場合、ADHDの診断を付けないことになっていました。 診断基準の除外規定にそう書かれていたためです。

DSM-5(2013年)で、この除外規定がなくなりました。 現在は、条件を満たせばASDとADHDを併記して診断できます。

よくある重なり方

重なり現れ方の例見分けにくい理由
ASD × ADHDこだわりが強いのに、気が散りやすく忘れ物も多い一見矛盾して見えるため、片方だけで説明されがち
ADHD × DCD動きは多いのに、体の使い方はぎこちない「落ち着きがない」でまとめられてしまう
SLD × DCD字が書けない。読みも遅い書けない原因が2つ重なっている
ASD × SLD内容は深く理解しているのに、読み書きだけが極端に苦手知識量に目が向き、困難が見えなくなる
ADHD × SLD宿題に取りかかれない。始めても続かない不注意なのか、読み書きが苦しいのか区別しにくい

重なりを意識することには、実際の意味があります。たとえば「字が書けない」に対して、原因がSLD側なら読み書きのアプローチが、DCD側なら道具や書く量の調整が有効になります。原因を取り違えると、支援が効きません。

知的発達症との関係

知的発達症(知的障害)は、DSM-5-TRでは同じ神経発達症群に含まれます。発達障害と知的発達症は、併存することもあれば、しないこともあります。

知的な遅れがない場合、困難が「本人の努力不足」と受け取られやすく、かえって支援につながりにくいことがあります。

二次的な困りごと

特性そのものとは別に、うまくいかない経験の積み重ねから生じる困りごとがあります。これを二次障害と呼ぶことがあります。

「グレーゾーン」ということば

「グレーゾーン」は、医学的な診断名ではありません。 診断基準をすべては満たさないけれど、生活のなかで確かに困りごとがある状態を指す通称として使われています。

似た意味で「発達障害の傾向がある」「特性がある」という言い方もされます。

グレーゾーンだから支援が要らない、ということはない

ここが最も誤解されやすい点です。

診断がつくかどうかは、基準を満たすかどうかの話です。困っているかどうかとは別の軸です。基準にわずかに届かなくても、本人が毎日つらいのなら、支援は必要です。

診断がつかないことに、時間をかけすぎない

「白黒つけたい」という気持ちは自然なものです。ただ、診断名を確定させることに時間とお金を使うより、いま目の前の困りごとをどう減らすかに取り組んだほうが、生活は先に変わります。

診断が必要になるのは、多くの場合「制度を使うため」です。目的が決まってから取りに行く、という順番でも遅くありません。

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診断を受けるかどうか迷っている場合は、診断・検査の流れで、実際に何が行われるのかを確認してみてください。相談先は相談先・リンクにまとめています。

出典

最終更新 執筆 sin(ADHDとASDの兄弟を育てています。)